SrTiO3(STO)結晶の構造と製造方法

 SrTiO3はSrO層とTiO2層が順番に積み重なったペロブスカイト(Perovskite)型の結晶で室温では立方晶の結晶構造をとる。一致溶融化合物のため、融液から単結晶を得ることができるが、室温よりもさらに低温にしてゆくと110K付近で相転移(立方晶 ⇔ 正方晶)を起こす。一致溶融化合物かつ二成分系酸化物のため、一見 Cz (Czochralski) 法などでの結晶育成に適していそうであるが、Ti酸化物特有の高温・還元雰囲気で酸素欠損が生じやすい性質から、結晶が金属化しない条件での育成が不可欠である。そのためIr(Iridium)やMo (Molybdenum)など高温で酸化し、融解・気化してしまうルツボや部材を使用する育成法では適した雰囲気制御が難しく、良質な単結晶を安定して得ることは容易ではない。溶液法を用いたTSSG (Top Seeded Solution Growth) 法やルツボを使わないFZ (Floating Zone) 法での育成で良質な結晶が得られたとの報告があるものの、コストや生産量の点から現在では火炎溶融 (Verneuil) 法で育成した結晶が広く市販されている。

 

 

SrTiO3の単位格子

 

 

 

 火炎溶融法では金属化しない雰囲気条件で育成されるものの、as-grown のSrTiO3結晶は酸素欠損を多く含み濃青色に着色して導電性がある。一般的には酸素欠損が少なく、無色で絶縁体のSrTiO3結晶が求められるため、酸素を補填する熱処理(酸化アニール)を行う。通常であれば酸素を十分に補填するために酸素雰囲気等でアニールすることが好ましいが、SrTiO3結晶の場合 酸素雰囲気でアニールをすると褐色化してしまうため、水素雰囲気でアニールを行うことで無色化する工程が用いられている。

 

SrTiO3単結晶ブール